・「OUT 上下」桐野夏生/講談社文庫
・「雨にも負けず粗茶一服 上下」松村栄子/ピュアフル文庫
・「小さき者へ重松清/新潮文庫
・「さよならバースディ」荻原浩/集英社文庫
・「ロズウェルなんか知らない」篠田節子/講談社文庫
・「占い師はお昼寝中」倉知淳/創元推理文庫
・「試験に敗けない密室 千葉千波の事件日記」高田崇史/講談社文庫
・「ネクロポリス 上下」恩田陸/朝日文庫
・「“文学少女”と恋する挿話集 1」野村美月/ファミ通文庫
・「まほろ市の殺人 冬 蜃気楼に手を振る」有栖川有栖/祥伝社文庫
・「狂乱家族日記 拾壱さつめ」日日日/ファミ通文庫
・「女王陛下のえんま帳―薬師寺涼子の怪奇事件簿ハンドブック」田中芳樹/光文社文庫
・「フェティッシュ西澤保彦/集英社文庫
・「モデラートで行こう♪」風野潮/ピュアフル文庫
・「ポーの話」いしいしんじ/新潮文庫
・「パズル自由自在 千葉千波の事件日記」高田崇史/講談社文庫
・「夜が闇のうちに」楡井亜木子/ピュアフル文庫
・「ヴァルプルギスの後悔 Fire1. 」上遠野浩平/電撃文庫
・「付喪堂骨董店 不思議取り扱います 5」御堂彰彦/電撃文庫
・「ゼペットの娘たち 2」三木遊泳/電撃文庫
・「空ろの箱と零のマリア御影瑛路/電撃文庫
・「春の窓 安房直子ファンタジスタ安房直子/講談社X文庫
・「マイナークラブハウスへようこそ!」木地雅映子/ピュアフル文庫
・「ピュアフル・アンソロジー初恋。」安藤由希,香坂直,永井するみ,前川麻子,大崎梢,枡野浩一/ピュアフル文庫
・「猫丸先輩の推測」倉知淳/講談社文庫
・「猫丸先輩の空論」倉知淳/講談社文庫
・「レモン・ドロップス」石井睦美/講談社文庫
・「断章のグリム ? なでしこ 上」甲田学人/電撃文庫
・「断章のグリム ? なでしこ 下」甲田学人/電撃文庫
・「ミシン2/カサコ」嶽本野ばら/小学館文庫
・「ユルユルカ―薬屋探偵妖綺談」高里椎奈/講談社文庫

「ぼくは体が悪いから、他のひとより、ちょっとのことしかできないだろ。だから、そのちょっとのことだけはさ、大切にね、他のひとがやらないくらいていねいに、やらなくちゃいけない、って気がするんだよ」

「ポーの話」 p.255



客の前でベースを弾くようになって、あたしは知った。ミュージシャンは、一定のレベルを保って演奏しているだけでは役目が果たせない。足を運んだ人々を解放させ、快楽を与えなければならない。完成された音楽が持っている力以上のものを、自分の興行で示さなければならない。

「夜が闇のうちに」 p.40



ああ、うん。みんなうまく騙されてくれて本当にありがとう。私の都合の悪い部分を知らないままでいてくれて本当にありがとう。

空ろの箱と零のマリア」 p.165



頑張ってる。頑張って、楽しそうに見えるようにしてる。
正解だった。否定されるより完璧な正解だった。

空ろの箱と零のマリア」 p.170



「どこがだ。そんな妄執的な恋愛感情なぞ、憎しみと同じものではないか」
「憎しみと同じ?」思わず面食らう。「……ぜ・全然違うよ」
「同じだ。……いや、確かに違うな。本人が汚いものと自覚できない分、憎しみよりたちの悪い感情だ。ひどくおぞましい」

空ろの箱と零のマリア」 p.165



体温が抜けていく。私の中身が抜けていく。
ちゃんと私の汚い中身も、きれいに全部抜けてくれるといいなあ。

空ろの箱と零のマリア」 p.229



ああいうとき、ほかの子だったら、なになにって、しつこいくらい聞きまくるんだろうな。それが、女の子同士のやさしさってもので、そんな土台の上に女の子の友情はゆらゆらと不安定に成り立つわけだし、だから綾音は、あたしのことを「冷たい」と言うのだろう。

「レモン・ドロップス」 p.17



たかが知れていたって、そのなかであたしは生きているのだよ、真希ちゃん。と、あたしは思ったけど、言い負かされるにちがいないから黙っていた。

「レモン・ドロップス」 p.44



「未来に向かって、ずっと生きつづけてきたつもりだったけれど、ある日、過去に向いているじぶんに気づくのよ」

「レモン・ドロップス」 p.64


「確かにね。でも自分の体も魂も、そんなに信用に値するものだろうか?」

断章のグリム ? なでしこ下」 p.98


矛盾は罪ではない。嘘は期待を裏切らない為の思い遣りだ。彼が違和感に耳を押さえて足下に転がる小石に躊躇している間に、周りの人達は器用に泳いで早くおいでと手招きをする。
時間に置いて行かれる。鼓動で時の流れを自覚するようだ。自分が呼吸した分、世界が進んで行ってしまうのではないかと思うと息が苦しくて胸が詰まって涙が出そうになった。
何処へ行けば良いのだろう。どうやって進めば良いのだろう。

「ユルユルカ―薬屋探偵妖綺談」 p.118



思うようにいかない。我が身を斬り付けて、血でも流せば後悔と自責も身体から出て行ってくれるだろうか。
そんな安堵の得方こそ間違えていると知らない訳ではない。ただ、雪の様に白い包帯が瞼にちらついて、彼の願いなど無駄に過ぎないと思い知らされたようだった。

「ユルユルカ―薬屋探偵妖綺談」 p.218