・「密閉教室」法月綸太郎/講談社文庫
・「レインツリーの国有川浩/新潮文庫
・「夜の朝顔豊島ミホ/集英社文庫
・「晩夏の蝉」前川麻子/光文社文庫
・「きつねのはなし」森見登美彦/新潮文庫
・「二の悲劇」/法月綸太郎/光文社文庫
・「風が強く吹いている」三浦しをん/新潮文庫
・「都会のトム&ソーヤ 6 ≪ぼくの家へおいで≫」はやみねかおる/講談社YA!
・「パスワード悪の華 ―パソコン通信探偵団事件ノート 22―」松原秀行/青い鳥文庫
・「おれは非情勤」東野圭吾/集英社文庫
・「となり町戦争」三崎亜記/集英社文庫
・「金のゆりかご」北川歩実/集英社文庫
・「葉桜の季節に君を想うということ」歌野晶午/文春文庫
・「ショートソング」枡野浩一/集英社文庫
・「僕は運動おんち」枡野浩一/集英社文庫
・「さつき断景」重松清/祥伝社文庫
・「神様のメモ帳 4」杉井光/電撃文庫
・「コミュニティ」篠田節子/集英社文庫
・「バスジャック」三崎亜記/集英社文庫
・「トラブル クッキング」群ようこ/集英社文庫
・「スクランブル」若竹七海/集英社文庫
・「鬼火/底のぬけた柄杓」吉屋信子/講談社文芸文庫
・「お縫い子テルミー」栗田有起/集英社文庫
・「弥勒篠田節子/講談社文庫
・「サンタクロースのせいにしよう」若竹七海/集英社文庫
・「漱石と倫敦ミイラ殺人事件」島田荘司/集英社文庫


当時は読書好きな友達がいなかったので、その本の感想を話す相手はいなかった。ただその結末を呆然と受け止めて、―ちょっとしたトラウマになった。
その後もそのシリーズを何度となく読み返した。だか完結巻だけは滅多に読み返せなかった。
俺以外の奴は、あのラストをどう受け止めてたんだろう?
レインツリーの国」 P.10―11

だってあのラストがハッピーエンドだったとしたら、私はこんなに長い間この物語に思いを寄せ続けていたでしょうか?ああ楽しかった!」で本を閉じていたら、十年間もこんなに囚われていたでしょうか?
レインツリーの国」 P.15

↑あたしにとって、この感覚が…「ココの詩」だなぁ、きっと。
小学校…低学年?だった、と思う。あたしの記憶が間違いなければ、図書室は、低学年は入っちゃいけなかったか借りちゃいけなかったかで…とにかく1人でこっそりしのびこんで…初めて自分で(意識的に)選んだ本が、これだった気がする。買って貰う、じゃなくて(まぁ、図書室の本だから、自分で買った訳じゃないんだけど、1人で手に取った、っていうか)。
途中から、怖くて怖くてどうしようもなくて、でもどうしようもなく続きが気になって、読み終わるまで気もそぞろだった覚えがある。
初めて読んでから、時々図書室に通って、読んだ。何故か、借りられるようになってからも、外には持ち出さないで、誰かと一緒の時には手も触れないで…1人で、椅子にも座らないで(笑)、こっそり棚の間にぺたん、と座って読んでいた。

高校生になってから、手元にも置きたくて注文したんだったなぁ…

切ない、とか、苦しくて好き、とか、そういう、プラスかマイナスか判別出来ない感情、っていうのを、甘美なものとして捕らえた初めての経験だった…気が、する。




伸行としては普段通りの喋り方なのに、いちいちはしゃがれると言葉を喋らされている九官鳥のようであまり気分がよくない。
レインツリーの国」 P.35


だいたいあれをみんながかわいがっていることがおかしかった。普段はさんざん弱いものいじめをしているくせに、人間でない「弱いもの」には同情するなんて、どういう話なのかまるでわからない。その理不尽さにまた苛々する。
「夜の朝顔」 P.79


あの頃の記憶には「しこり」が多い。楽しいことだってたくさんあったはずなのに、思い返すと、砂利を噛んだような気分になります。特に不運な環境にあったわけでもないのに、なぜでしょう。明るい子どもでいることにせいいっぱいだったので、淋しいとか心細いとか腹立たしいとか、そういう気持ちを出す余裕がなく、言葉にならないかたちで後に残ってしまったからかもしれません。
「夜の朝顔 あとがき」 p.229


噛み締める白米の温かな甘味と柔らかな鮭の塩気の味わいに、あたしみたいな女こそ滅茶苦茶に殴られて無理やりに犯されてざくざく刺されて死ねばいいと思う。
「晩夏の蝉」 P.290


こんなことが自分の人生にあるはずがない。
自分の挫折感をうまく受け入れられなかった。どうせ、という投げやりな前置きばかりが頭に浮かぶ。
「晩夏の蝉」 P.104


「昔は黙ってるとぶたれたんですよ」
思わず顔を上げる。
「黙ってると、何考えてるのよってぶたれた」
母親のことだろうか。
「いつ頃のこと?」
「ずっと。いつも」
「晩夏の蝉」  P.62・3


「昔はね、僕はうまく喋ることができなかった。人と喋ろうとしてもすぐ言葉に詰まる。それがなぜなのか、よく分からなかった。ただ自分の言葉が、嘘くさいんだ。嘘くさくて白々しくて、耐え難いんだ。大学に入ってからもひどくなる一方で、喋ることができない。それで人に会うのが嫌になって、下宿に籠るようになったんだ」
「きつねのはなし」 P.150




物語の終り。終りの終り。きみはまたしても生き延びてしまった。その代償として、またしばらく悪夢にうなされて眠れぬ夜の底を漂う日々が繰り返されるのだろう、ときみは思う。
―だが、きみはいずれ、それに慣れてしまうだろう。かつてもそうだったように。

「二の悲劇」 P.139




オレの記憶力に問題があるだけかもしれないが、真相がなんだったのかすぐ忘れちゃうのである。

「金のゆりかご」 P.550 (解説)




本好きを自慢する心は、さもしい。人はただ、必要」だから読んでしまうのではないか。威張るようなことではない。単に臆病で、それなしではいられなかったから、多くの本を読んでしまっただけだ。

「ショートソング」 P.110




スポーツなんて全部、意味がわからない。
ボールを投げたり打ったり蹴ったり人にぶつけたりして、何が楽しいの?
一秒の何分の一か、人より速く動けたとして、何が楽しいの?
ちっとも楽しくなんか、ない!
楽しいと思う人は、楽しいと思う人だけで、勝手に楽しめばいいじゃん。
僕は一秒も楽しくない。楽しくない僕のことまで、いちいち巻き込まないでほしいよ。

「僕は運動おんち」 P.125




あんな、わざと人にボールをぶつけるような野蛮な遊びが、法的に認められていること自体がおかしいと思う。

「僕は運動おんち」 P.167




「先生……、悪意がない言葉に傷ついてしまった場合、傷ついた側がわるいと思いますか?」

「僕は運動おんち」 P.171




幸せになることが人間にとっての幸せだと信じることが幸せだから―なぜ?

「さつき断景」 P.143




十五年先の未来は、そのとき、なかった。

スクランブル」 P.8




けれど、現実をこうしてノートにつけているだけなら安全だった。現実を紙に封じ込めているだけなら。

スクランブル」 P.246